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2018.01.30

北日本新聞に当社の記事が掲載されました。

2018/01/28 北日本新聞掲載記事内容

新商品開発で地域貢献


化粧品や養殖用の餌も


滑川高薬学部


富山には肌がきれいになる環境が整っているようだ。化粧品会社のポーラ(東京)が昨年11月に発表した「ニッポン美肌県グランプリ2017」で、富山が全国1位に輝いた。雨が多く湿度が高いなど、美しい肌を保ちやすい土地らしい。そんな富山の自然が生んだ素材を使い、化粧品を作っている部活動があると耳にした。滑川高校(滑川市加島町)薬学部の活動現場を訪ねた。

1月中旬、富山駅前のCiCビル1階にある物産店「ととやま」。県内の特産品がそろう店内の特設ブースに、淡いピンク色のボトルに入ったスキンケア用品が並ぶ。滑川高の薬学部が手掛けた「美絹(うつくしるく)」※1だ。部員が交代で販売実習をしていた。商品の説明をしてくれた尾崎美衣亜さん(1年)は「お客様と話せる貴重な機会。売れると楽しいしとてもうれしい」と話す。

悩む楽しさ

薬学部は、薬業科の授業を基に週1回、研究の方法や商品開発を実践形式で学んでいる。部員は男女10人で全員薬業科の生徒だが、普通科や海洋科からの入部も歓迎している。

「美絹」は、化粧品で富山の魅力を国内外に発信しようと、昨年5月から販売している。同校のOBが数多くいる前田薬品工業(富山市向新庄町)から声が掛かり、社会勉強と地域への恩返しを兼ねて、2016年にプロジェクトが始まった。これまで化粧水と乳液、リップクリームの3種類を開発した。顧問の小柴憲一教諭(49)は「授業とは違い、答えがない。悩む楽しさを知ってほしい」と話す。

成分や効果から使用感、パッケージまで、商品の内容は全て自分たちで決めた。南砺市の加水分解シルクや滑川市の海洋深層水など県産の素材を使い、べたつかずさらっとした使い心地になっている。友人に安心して薦められるよう、低刺激で敏感肌の人が使える処方にした。開発に携わった部長の村井真梨さん(2年)は「私も愛用している。とてもいい商品ができた」と笑顔を見せる。

当初は2、3年生でプロジェクトを進めていたが、卒業や研究発表会が近づき、現在は1年生6人が中心になっている。今夏までに洗顔フォームを世に出す予定だ。滑川市のふるさと納税の返礼品にもラインアップされた。大澤佳鈴さん(1年)は「もっと多くの人に魅力を伝えたい」と意気込む。

5年越しの成果

活動は化粧品開発ばかりではない。美絹のプロジェクトに参加していた2年生4人は今、サクラマスの餌の開発に取り組んでいる。卵から養殖している海洋科と協力し、5年間続いている研究だ。

サクラマスは攻撃性が高く、共食いしてしまったり、校内の狭い水槽でストレスを感じて死んでしまうことがある。与える餌を変えることで、死亡率を下げられないかという思いから始まった。

薬業科の生徒や部のOBが調査を進め、エビやカニに含まれる赤色の色素「アスタキサンチン」の抗酸化作用が有効だと突き止めた。しかし、実験はうまくいかず、約3年間中断していた。

研究を受け継いだ2年生4人は、アスタキサンチンの含有量が世界一の藻を使おうと提案。富士化学工業(上市町横法音寺)から素材を提供してもらい、試作を重ねた。与える餌の量や成分の配合などを微調整しながら実験を繰り返した。死亡率を下げるだけでなく、身が赤く、弾力のあるおいしい魚に成長する餌「滑高301号」※2を完成させた。

26日、県内の工業高校生がものづくりの研究成果を発表するコンテスト「ミラコン2018」に出場した。「この大会に出たくて入部した」という4人は、目標の最優秀賞に輝いた。「OBや学校の先生、企業など、多くの方の協力で成り立った研究なのでとってもうれしい」と副部長の椎名美羽さん(2年)が声を弾ませる。

部員たちは開発を通して、技術に裏打ちされた「滑高ブランドを確立したい」という目標がある。

「美絹だけで全身のスキンケアが終わるようにシリーズ化したい」と小柴教諭。部長の村井さんが力を込める。「これこそ、滑高で作ったものだと分かってもらえるよう、後輩にも受け継いでいきたい」  (文化部・藤木優里)

※1 美絹   

県内外の美容院や雑貨店、ショッピングセンターなどで販売する。化粧水は1620円、乳液は2376円、リップクリームは864円。


※2 滑高301号

1717年、富山藩士が江戸幕府将軍の徳川吉宗にますずしの前身、あゆずしを献上したことが由来。300年の節目の年に開発した第1号の餌で、新しい一歩を踏み出したいという思いを込めた。